6色インクジェットガーメントプリンターの色域戦略について考えてみました〜オレンジ・ブルー vs レッド・グリーン

理論上(データ上)はCMYKの4色でフルカラーが表現できているはずなのだが、現実にインクでプリントすると4色では足りない場合がある。足りない色域を拡大するために2色プラスしている。

今回は弊社で所有しているインクジェットガーメントプリンターの色域戦略についてです。

昨年の設備増強によってインクジェット部門が大幅に拡充されました。

昨年夏にkornit(コーニット)のStormHEXA(ストームヘキサ)。

昨年末〜今年初めにSROQ(エスローク)のroq hybrid(ロークハイブリッド)。

の2台が導入され稼働しています。

この2機種ともCMYKに2色をプラスした6色インクジェットガーメントプリンターです。

●色域とは

プリンターの場合、色域とは、使用しているインクで表現できる色の範囲、ということになると思います。データ上ではCMYKで表現されているのに、実際にインクを使用してプリントすると、表現できていない色が出てきます。CMYKを濃くすれば良いかというと、物質としてのインクは重ねるほどに暗くなってしまうので、表現力が広がることにはならないのです。そのCMYKの限界を補うために2色プラスしたプリンターがあります。

●2色の選択

このプラス2色を何色にするかが戦略として非常に面白いところかと思います。

松栄シルクでは、

roq hybridがCMYKにオレンジとブルーをプラスした6色機。

StormHEXAがCMYKにレッドとグリーンをプラスした6色機。

と、メーカーとしての戦略が違います。

実際に両方を稼働してみて、両者の戦略・特徴を挙げていきたいと思います。

●比較と特徴

使用する画像はこちら↓

リーダー広部。iPhoneで撮影。

↑の画像をなんの調整もせずに、白Tシャツにプリント。実際にプリントしたものをiPhoneで撮影しているので、写りによっては色が違って見えるかもしれません。。。

全景で比較

roq hybrid 白Tシャツにプリント。
StormHEXA 白Tシャツにプリント。

roq hybrid:
元画像に近いバランス。

StormHEXA:
コントラスト強め。レッドとグリーン系が強く出ている。
元画像より強めに表現されている。調整により彩度を下げるなども可能だが、実際にTシャツ上にプリントすると画像の印象そのままだと弱い印象になるので、それを考慮してあえて強めに出しているのかもしれない。

顔の拡大で比較

roq hybrid
StormHEXA

roq hybrid:
肌色が明るく綺麗に出ている。オレンジインクの効果。薄いオレンジ=肌色が出しやすい。インクジェットでは綺麗な中間色を出すのが難しい。オレンジインクが無い場合、イエローとマゼンタで表現することになるが、その場合はイエロー寄りになったり、マゼンタ寄りになったりと転びやすい。背景のタイルを見てもオレンジインクの効果で元画像より綺麗で明るい表現となっている。

StormHEXA:
こちらはレッドインクが肌色を強くしてしまっている印象。コントラストが強く、パンチがあると言えなくもないが、赤く転びやすいので、好みによっては調整が必要になる。
背景の看板のレッドが、レッドよりの赤として表現できている。暗さを除いていけばより綺麗なレッドが出せそう。roq hybridの方では黄色よりの赤となっている。

タイダイ部分の拡大で比較

roq hybrid
StormHEXA

roq hybrid:
元画像に近く表現できている。もともとこのタイダイのTシャツは作業着として数年着ているので洗濯に洗濯を重ね、色褪せた部分が表現できている。ブルーに関しては、深く綺麗な発色。ブルーインクの効果。深く綺麗なブルーもCMYKだけでは表現が難しい。CMYKだけだと、深いブルーを表現するためにはシアンとマゼンタインクを大量に必要になるが、ブルーインクがあれば、一つのインクで表現ができ、インク量の削減に繋がる。

StormHEXA:
鮮やかな表現ができている。特に緑と赤よりのオレンジが濁りがなく綺麗な発色となっている。逆に本物の色褪せた感じが出ていない、とも言える。

●まとめ

私が感じた表現力の違いの印象をイメージ図にしてみました。

表現できる範囲と快調の細かさ的な。。。
やや広がって細かくなっている印象。。。
CMYKとレッドとグリーンに特化して広くなっている。。。

という印象でした。

専門家の方々からみたら「違う」と言われてしまうかもしれません。。。その際はご教授いただけたら幸いです。

実際のプリントでは、そもそものインクの作りの違い、データの解像度、生地の状態や、ドロップサイズ(インクジェットのドットの大きさ)やカラープロファイルにもよるので一概には言えないかもしれません。特に、両者の前処理方法の違いで、プリント面の平滑さが違うので、プリントの表現の印象も変わります。

roq hybridの方は、ペースト状の前処理剤をシルクスクリーンでプリントするため、印刷面が押し固められツルツルな状態になっています。平滑な面にプリントする方が精細に見えます。代わりに、ペースト状の前処理剤をプリントしたことにより、生地の柔らかさは減少し触り心地が硬い印象になります。

StormHEXAは前処理剤を噴霧するだけで(プレスなどの圧力をかけない)ので生地の柔らかさをそのまま活かせます。そのぶん、生地の凹凸や毛の上にプリントするので、硬い平滑な面にプリントするroq hybridに比べると精細さは劣って見える場合もあるかもしれません。

なので、単純な比較はできないかもしれませんが、なんとなくの印象として感じていただけたらと。。。

※画像によってはCMYKだけでも十分に表現できるものが多いです。逆に言えば、6色の恩恵をあまり感じられない場合もあります。画像調整によって補正も可能な場合も多いです。

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