今回しょうかいする本は、自宅の本棚ではなく、会社の自分の仕事場に常に置いてある本です。
別冊Newton「錯視と錯覚の科学〜目の錯覚はなぜおきるのか?」
これは、印刷やデザインに関わる人には特に資料としてもお勧めします。
柄の形や配列、明暗差、色の対比、残像などによって、静止画が動いて見えたり、傾いてみえたり、同じ色のはずが違って見えたりする現象をわかりやすく紹介してくれています。
特に、Tシャツプリントに関わる人には色の見え方や、傾いてみえやすいパターンなどのところが参考になると思います。
Tシャツプリントは、紙の印刷と違い、プリントされる媒体が白だけではなく、Tシャツの生地色があります。
例えば、同じインクを白いTシャツと黒いTシャツにプリントした場合、違う色に見えます。
これは、インクの色は同じなのに、背景色(生地色)との対比で違う色に見えるという現象です。
(この場合、背景の黒との対比でインクの色が明るく(白っぽく)見える。)
さらに、多色プリントになってくると、近隣のインクの色との対比で指定したチップ番号(Pantone、DICなど)と違って見えてしまうこともあります。
(このあたりは色彩検定の3級でも学べますね。)
(正しい色とは何か?とか、普段PCの画面でしか色に触れなくなっている人も、今一度、色彩検定3級を勉強してみると新鮮です。)
(加えて、モニターの色表示性能、プリンターの性能や、カラーマネジメントを勉強していくと色関係の不安や疑問が和らぎます。)
生地色、近隣の色、バインダーの種類、などを考慮してインクを作る必要がでてくる。
故に、工場には同じ色番号でも何種類ものインクがデータベース化され保管されています。
柄の形やパターンについても参考になる点が多いです。
まっすぐTシャツを張っているはずなのに、傾いて見える。とか。。。
生地目とメッシュの影響でモアレのように見える。とか。。。
デザインする側の人にとってもこの錯視と錯覚を逆に利用することで、限られた色数でもカラフルに見せたり、配列やパターンのレイアウトで動きのあるデザインに見せたりするもできるかもしれませんね。
普段僕が担当しているインクジェットでもこの錯視を利用していて、
例えば、インクジェットではシルクの特色印刷に比べると、CMYKの100%以上の表現はできないので、強い色、鮮やかな色が出にくいことがあります。
そんな時、デザイン要素の中に「黒」あった場合、その黒をなるべく濃くすることで、近隣の色がより明るく見える効果があります。
Photoshopなどの画像処理で「シャープ」という機能がありますが、これも錯視の応用で、色と色の間を薄い色にすることで隣の色が濃く見え、際立って見えるわけです。
(アンシャープマスクで強めにかけてみて、画像を拡大するとよくわかります。)
(というわけで、「シャープ」では色の差を利用しているだけなので、“ボケた写真のピントが合う” “低解像度の画像がキレイになる”みたいなことはできないことがわかります。)
上記以外でも、モヤモヤ動いて見える画像とか、日常に潜む錯視と錯覚とか見ているだけでも面白いので、今でもたまに会社で手にとって眺めています。
お勧めします。