私の本棚~羆嵐(くまあらし)

『羆嵐』吉村昭(1977年)

1915年(大正4年)に北海道苫前郡苫前村三毛別六線沢 (現在の苫前町三渓)でヒグマが開拓民を襲った三毛別羆事件をモデルにした作品である。(ウィキペディアより)

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生活するだけでも過酷な未開拓の北海道。そこへ巨大な羆が襲う。。。

寒い今の時期に読みたい本。

僕が松栄シルクに入っ2、3年目くらいの時、漫画『ザ・ワールド・イズ・マイン(新井英樹)』(この漫画には「ヒグマドン」という怪獣が出てくる)を読んでいたら、先輩から、

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「それならこの本を読んでみろ」

といって渡されたのがこの本。

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その時から8年後、このブログでも紹介した『漂流』をきっかけに社内で再び吉村昭ブームがおこり、別の先輩から再びこの本を渡されました。(最初の先輩は残念ながら退社されてしまいました。)

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今回改めて読んでみると感じ方が違いましたね。

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著者独特の、エンターテイメント性を抑制した淡々とした文体から、過酷な北海道の冬を感じるのはもちろん、

僕自身が家族を持つ身となっているので、無慈悲に家族を食べられ失うことの絶望感がより生々しく想像できてしまう。

また、年齢を重ねた分、村人、責任者、警察官、身分の差、猟師、夫婦、などの関係の機微をより味わうことができるようになっていました。

特に、最初に羆に襲われる島川の家の描写、、、

島川が、酒などのささやかな贅沢さえも節制し、我慢に我慢を重ね資金を貯め、やっと建てた板囲いの家。板のお陰で寒風が入り込まないであろう島川の家を、羨ましそうに他の村人が眺めている。。。その家に羆が!!島川の真面目さの結晶である板囲いの板も、羆には何の防御にもならず軽々と蹴散らされて。。。。。

雪の中を裸足で逃げてくる子供とか出てきちゃうともう、。。。涙。。。

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北海道の厳しい寒さをわずかでも共感できる今の時期におススメです。

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