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ワールドカップもついに決勝トーナメントが始まり、連日寝不足な方も多いと思います。
特に今回は日本チームにいろいろ有りすぎて、にわかファンから筋金入りのファンまで、さらにはファンではない人まで、議論のネタに事欠きません。
私としては、こうして議論できるだけでも有り難いと思うんですけどね。
日本戦以外でも、波乱や、逆転、ジャイアントキリング、熱戦が多く展開され、工場の従業員の間でも、どこが優勝するのか予想で話題が持ちきりです。
ワールドカップシーズンになると思い出すヒーローがいます。
私がホテルのバーで働いていた時代、2006年のドイツ大会のときでした。
そのホテルは不思議なホテルで、港区の立派な場所にあるホテルなのですが、宿泊客の他にも、ご近所の皆さんにも親しまれていたホテルでした。
港区とはいえ、落語「芝浜」で出てくる増上寺に代表されるような歴史的な土地で、町内会の繋がりも強く、ホテルで地域のイベントを開催したり、町内の人たちがフラリとバーに飲みに来たりするような、アットホームな場所でした。
そのうちの一人で、ホテルの近所で洋食屋さんを営んでいる青山さんという方がいました。
酔っ払うとバーで寝ちゃうことで有名で、カウンターの下で寝ていたという伝説を持つような人でした。
2006年のドイツワールドカップが近づいてくると、青山さんはいつにも増して興奮気味に来店。
「俺はワールドカップのヒーローだったんだ!」
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落ち着かせて話を聞くと、ドイツ大会の前回、日韓ワールドカップのとき、バーでパブリックビューイングが催され、そこで青山さんは観戦していた、と。
そこへ、テレビの取材班が来ていて、青山さんはインタビューを受け、それが放送された、と。
放送後、ご近所さんから称賛を浴び、自分はヒーローになったのだ────。
私は日韓大会のときにはまだバーで働いておらず、知りませんでした。
しかし、今回のドイツ大会でもヒーロー(自称)になる気マンマンの青山さんに残念なお知らせが。
ホテルの方針が変わり、今回はパブリックビューイングは開催されません。
「なんでだ!?俺はヒーローだったんだよ!?」
大変申し訳無いのですが、サッカーを観ないでお休みになっているお客様も沢山いらっしゃいまして、夜中に大きな音を出すわけにもいかないので…。
「なんでだ!?俺はあの時ヒーローだったんだよぉぉぉぉ!!!!!」
「…ヒーローだったんだzzzzzzz…」
───いつものようにカウンターで寝て、起きて、ヨロヨロと近所の自宅へ帰っていきました。
来店するたびに、パブリックビューイング開催を懇願する青山さんの健闘むなしく、結局パブリックビューイングは開催されないまま青山さんのワールドカップドイツ大会が終わりました。
私は2007年の12月にバーを辞め、翌年から松栄シルクに入社したので、その後のヒーローの消息はわかりません。
日本代表の勝敗とは別の種類の悔し涙を流すヒーロー。
2002年が青山さんの人生のピークだったのか───。
それは過去の栄光なのか───。
あなたの人生のピークはいつでしたか?
あなたの全盛期はいつでしたか?
今回の日本代表は、”おっさんJAPAN”と揶揄され、”全盛期”を過ぎたと思われている人選だと言われていましたが、結果は番狂わせを演じ、グループリーグ突破の快挙。
今年こそは青山さんの人生の新たなピークになることを願っています。
以上、ワールドカップシーズンになると思い出すヒーローの話でした。