前回の記事で理想的なお父さんになることに成功したはずの私は、帰路につくころにはすっかり疲れていた。
子供の遊びに付き合って疲れたのではなく、
飲み疲れていた。
理想的なお父さんは午前中から生ビールを飲んでいたから当然である。
日が傾く頃には、もうお酒は飲みたくなくなっていて、久しぶりに日光を浴びたこともあり眠気も襲ってくる。
子供は遊び疲れて歩く気を無くしている。
抱っこをするしかないが、抱っこして歩いているとすぐに息子は寝てしまう。
熟睡する息子は殊更に重い。
広大な敷地が恨めしい。
ゲートまでが遠い。駅までが遠い。
理想的なお父さんである私は、すでに腰にキテいるが、理想的なお父さんなので表情には出さない。
やっとの思いで立川駅までやってくると、耳元で「うどん」という声。
都合よく息子が目を覚ましたようだ。
昭和記念公園の帰りには、立川駅構内、北改札内すぐの「武蔵野うどん」によることが我ら親子の最近の定番となっている。
券売機のタッチパネルを「かけうどん」と「エビスビール(小瓶)」を選択。
いつの間にか私から定期入れを奪っていた息子が、券売機にSuicaをタッチして、ニヤリと私を見上げている。
飲み疲れていたはずが、寝た子供を担いで数キロ歩くという労働をしたあとは、自動的に「飲んでもいいよね」モードになる。
ステンレスのタンブラーも冷えていて、小瓶の量がちょうど良すぎる。
このうどん屋さんは、駅構内にあるが、立ち食いではなく、椅子に座って比較的広めのテーブルで食べることができる。
武蔵野うどんとは、かけうどんしか注文したことがないので詳しくは知らないが、
粉の旨味を感じられる太めで、いい意味で粉っぽいハードな麺と、
出汁が効いた透き通ったツユ。塩っぱくないので、子供でも楽に食べることができる。
店員さんも子連れに優しく、大人にはお茶、子供には水を、子供用の器もわざわざ頼まなくても出してくれるほど気が利いている。
恵比寿の小瓶を飲み干した頃にうどんが運ばれてくる。
子供用の器に3分の1ほどの麺を移し、子供に用意されたタンブラーの水をかけて冷ます。(出汁が効いているのでこれでも子供も十分美味い)
このお店の各テーブルにはつけ汁系うどんを注文したときにの濃いめのつけ汁を割って飲むように、熱々の出汁汁が入ったポットが置いてある。
私はこれをかけうどんに使う。
麺を食べ終わったら、テーブルに置いてある出汁割り用のポットから、
残ったかけうどんのつゆに出汁を注いで、また飲む。
つゆが少なくなったら、また出汁を注いで飲む。飲む。飲む。
もちろん味自体は薄くなっていくが、出汁の旨味が楽しめ、アルコールと理想的なお父さんの邪念に取り憑かれた身体には、それが染み込むほどに美味いのだ。
今日もごちそうさまでした。
(食べる前の写真を取り忘れました。)